2)事前学習

2018年組(2018年夏に現地研修を迎える方)に有効になりました。

 英語学習

 現地に行く目的は、英語力を伸ばすことではなく現地に行くまでに伸ばした英語力を試すことです。従って、さしたる準備もなくその日を迎えたということになると、研修の効果はたいそう薄いものになるのだと思ってください。また、英語上達のコツは、自分に負担をかけることです。短時間でもよいので物凄い集中力で臨むとよいです。世話教員鈴木は英語学習理論の専門家ではありませんが、大学英語教員として、英語学習に対するアドバイスを以下のように差し上げます。科学的な裏付けのあるものではなく、あくまで世話教員の経験則ですが、参考にしてみてください。

 標準的な九大生の場合、特にリスニングと単語が不足しています。そして1分スピーチはぜひして欲しいです。TOEFLiBTのスピーキング試験では60秒で要約+意見の録音が求められます。11月の学習連絡会直後に提出いただく計画に沿ってしっかり英語の自己学習を進めておいてください。ケンブリッジ大学という世界最高峰での現地研修と時間をかけた事前学習プログラムのお膳立てに加えて若い頭があるのですから、この恵まれた環境でも自分を鍛えることがないのであれば、恐らく一生する機会はないでしょう。いわばこの研修が皆さんの人生の試金石とも言えるでしょう。また、これは全国大会に行く部活のようなもので、監督からしっかり鍛えられるものです。手を抜かないで下さい。以下、各項目ごとにアドバイスを差し上げますが、すべてみっちり取り組むのは困難だと思われますので、決め手はどういう方針を立てて選択と集中をするかにかかっています。単語は継続が力になりますが、その他の技能については、短期集中的に取り組むことが大切で、長期に細々するより効果が高いと思います。

【英語学習のコツは負担をかけること】
 最初にお断りしたいのは、英語上達のコツは、結局のところ、自分に負担をかけることだということです。巷に、努力なしに英語力が伸びるとうたった教材があふれていますが、そのようなことが可能であるならば、誰も学習方法に思い悩んだりしません。

 学習時間については、大学入学程度の平均的英語力から、実用最低レベルと言われるTOEICの730点レベルに至るまで、約1500時間が必要とされるとも言われています。しかも、その1500時間とは、英語を聞いたり読んだりして、直接英語を使用している正味時間のことですので、日本語で解説を読んでいる時間などは含まれません。これは学士課程4年間に置き換えてみれば、毎日例外なく1時間英語を直接使い、トータルではさらに多くの時間を使って学習に取り組むことを意味します。これがいかに大変なことか、実際になるべく英語学習に時間を割こうとして悪戦苦闘してみた人ならすぐにわかると思います。それだけ多くの時間が英語をモノにするためには必要だということであり、それを避けて通る便法はないと言えます。

【英語学習は短期集中で】
 現実的にはなかなか継続的に長時間の学習を行っていくことは難しいものです。そのときに、継続的に学習を進めても1回1回が短時間では効果が薄く、短期集中で密度濃く特定の技能について学習する期間と他のことをする期間を繰り返した方が効果があります。例えば英会話教室に通うにしても、週に1回45分程度ではいつまでも力が伸びないものですが、夏休みに集中して毎日行った方が効果があるようです。但し語彙習得については継続が力となります。詳しくは語彙学習の項で述べることにしましょう。

【英語学習は効果が出るまで時間がかかる】
 英語に限らず、外国語の習得は効果が出るまでにかなりの時間がかかります。効果が出てくるまでに投資される時間や労力があまりに大きいために、途中で投げ出してしまう方々もおられるようです。そうした投資があってこそブレークを経験して一気に力が伸び、以降はコンスタントに伸びていきます。ただし上位になってくると頭打ちを経験します。

【あくまで第2次言語習得である】
★英会話に走らない
 日本人が国際舞台においてたくましい英語力で外国人を相手に次々と仕事をこなしていく場面などに出会うと、まだそのような段階に至っていない人々は大いなる焦りを感じ、とにかく対話の訓練をしなければ話にならないと思い込み、あわてて英会話学校へ通いはじめながら、なかなか効果があがらないということがよくあると思います。それは、必要な文法や語彙の習得を十分行わず、それに割くべき時間をもっぱら会話に充てようとするからです。

★単語と文法
 日本語が母語である私たちにとっては、英語は後から学習する言語です。母語(母国語ではありません)は第1言語と言い、後から学習する言語は第2言語と呼ばれています。それぞれ言語習得の過程が異なり、前者の第1次言語習得では、幼少時に脳内で活性化している言語習得プログラムの作用で、個別言語の刺激をもとに、苦労せずに文法と語彙が獲得されます。これに対し、第2次言語習得では、第1次言語習得の場合とは異なったメカニズムに基づいており、その内容は十分明らかにはされてはいませんが、習得が苦労せずに進むというわけにいかないのは明らかです。
 従って、まずすべきは文法と語彙の獲得です。後から学習する英語では、意識して単語を頭の中の引き出しから持ち出し、それらを規則に従って並べることによって英文を産出することになりますから、英文の素材としての語彙と、それらの並べ方の法則である文法をしっかり意識的に学び、定着させなくてはなりません。昨今中学校や高校の英語の学習課程の中で、文法をうたった科目がなくなり、生徒も英語という言語が規則の体系というよりはフィーリングで覚えるものだという考えに偏っているように思えます。丸暗記した表現を場面に応じて引き出して使う対処は日常英会話のレベルでしか有効ではありません。本当の英語力は、ゼロから瞬時に文を組み立てる力です。

★英語はスポーツ
 英語学習はスポーツのようなものです。華々しくて面白い試合(=実際の英語対話)に魅力を感じるのは当然ですが、そこで力を発揮するためには、きちんとした用具(=語彙)を揃え、競技上のルール(=文法)をよく身につけなければなりません。また、それ自体は面白いとは言えない筋力トレーニング(=英語のドリル)も必要です。用具もろくに揃わずルールも知らずトレーニングもなしに試合をしても、成果が出るはずがありません。

★読解より会話という勘違い
 大学の学部生は、読解は高校までに十分したので、大学では英会話がしたいということをしきりに言います。基礎はできたからもっぱら試合をしたいというわけでしょう。しかし、2つの点でそうはいきにくい面があります。

 1つは、本当に満足できる英会話というのは、買い物に使うレベルのものではなくて、人生にとって大切な対話であったり、緊張を要する重大な商談の場面であったりするわけであり、内容的にも学術的なものであったり心の奥底から湧き出てくるものであったりするので、高度なレベルのものなのです。しかも会話というのは、リスニングとスピーキングを含めたリアルタイムのコミュニケーションという高等技能です。受信技能も発信技能も必要とされ、推論その他の能力も広く求められ、さらに瞬時に処理することが必要です。語彙や文法の力が不足のままこれらの高等な処理のプロセスを練習しようとしてもなかなか効果が出ないのは当然でしょう。

 もうひとつは、高校までに十分英語の学習をしたとは言えず、大学でも読解その他の地道な訓練を継続する必要があるということです。例えば、国際英語検定試験としてもっとも広く使われているTOEFL(Test of English as a Foreign Language)で、日本人受験者はアジアの諸国の受験者の中で平均点は最低クラスです。しかもリスニングよりもリーディングの成績が悪く、世界標準から見れば、とても「読解は高校までに十分した」とは言えない状況なのです。英字新聞が快適に読めるかどうかを試してみればすぐにそのことはわかるはずです。もちろんたいていの人が受験料を払うことができて気軽に受験する人の多い日本人と、本格的な英語が必要な進路を志す限られた人だけが受験する国々は直接比較になりにくいということはあると思いますが、意外と日本人が英語学習については労力を必要なだけかけていないということが言えると思います。中国や韓国の学生さんは、国内の学校の課程だけでかなりの運用能力を身につけています。スピーキングはこれに輪をかけて貧しく、TOEFLiBTのスピーキングのスコアで日本は160か国程度中最低を記録したこともあります。

 このように、外国語としての英語学習は、かなりの地道な努力を要するものであり、その意味では高校までの日本の英語読解聴解教育は大筋では間違っていないと思われ、その線でのレベルアップをこそまずは目指すべきです。このように、英語が第2言語の習得なのである限り、こうした地道な努力はどうしても欠かせないのです。

【まずは語彙力のアップを】
 その地道な努力の中でも最も地道な作業は語彙の習得です。大学英語教育の中で、読解やリスニングやディベートなどが取り上げられていても、ボキャブラリー・ビルディングが体系的に取り入れられているという例はあまり耳にしません。それだけ個人の自発的努力に委ねられていると言えます。単語は継続が力になります。実技とは異なり、覚える行為そのものはあまりおもしろいものではありませんが、スポーツの基礎に筋力トレーニングがあるのと同じで、楽しくなくてもぜひしておかなければならないものです。

★強制注入が必要
 よくある勉強法としては、リーディングなどの訓練の中で、知らない単語に出くわしたらその意味を調べるというものがあります。しかし、たまたま出会った単語のみを覚えていくというのでは間尺に合いません。強制注入が必要です。在外実用最低レベルとしてよく企業等で基準に採用されているTOEIC730点レベルに達するには、7000語レベルが必要だと言われています。また、一般英語学習者の最終目標は8000語レベルとも言われています(大学英語教育学会)。それに対し、普通は読む英文中の単語の9割程度が高校までの3000語レベルでカバーされますが、それを越える7000~8000語ということになると、出会ったら覚えるというのではなくて、強制注入しないと追いつきません。しかも引き出して使える単語(運用語彙)は知っているだけの単語(認知語彙)の7分の1という説もあります。知っているだけの単語を増やさないと使える単語も増えません。こうなると、英会話を志すのであれば、ますます語彙の刷り込みが必要だということになります。

★単語の出現環境情報をチェック
・単語を覚えるという場合、意味だけを覚えてもだめで、その単語が前後に何を従えるかという情報が英文の組み立てに必要になります。例えば、同じ希望を表す want/hope が後に for you to go を取れるかどうかで対立し、inform は「inform + 知らされる人 + of + 知らされる情報」のパターンで使用するということを知らずに、縦横無尽にこれらの動詞を使うことはできません。さらに、コロケーションと言って、自然な語と語の組み合わせを把握することも役に立ちます。例えば、assintanceなら前にgiveが典型的に付き、emphasisならputが付くといったことです。また、後述するように、発音の情報も大切なので、単語を覚える際には、発音記号とアクセント位置も同時に確認する習慣をつけることが大切です。

★単語集
 とにかく単語は全ての基本です。知らない単語はリスニングでいくら粘っても聞き取れません。伝えたい気持ちを裏切らないためには単語が命です。語彙学習の具体的方法を提案します。まず『九大英単』です。さらに九州大学全学教育の言語文化基礎科目の英語Ⅰでかつて使用された共通教科書『A Passage to English 大学生のための基礎的英語学習情報』(九州大学大学院言語文化研究院英語共通教科書編集委員会編:九州大学出版会)の第4版までについていた語彙の部分(11-16 章)が勉強になります(http://www.flc.kyushu-u.ac.jp/~passage/passage.html=このHP「教育(英語学習)」>「英単語」)。特に抽象語彙をものにしましょう。何といっても皆さんの英語力は学業や仕事などで活かすためのものですから。

 また、検定試験を受ける方は、試験対策の段階別教材の利用がお勧めです。試験対策として出現頻度の高いものが選定されているからです。

 日常語彙についてはOxford Photo Dictionary等の英絵辞典を推薦します。洋書を置く大型書店で Oxford University Press のコーナーを探すと見つかります。電子レンジ、じょうろ、ブランコ、おたま、まな板などは英語で言えますか?腕立て伏せやかくれんぼは?こうした基本的語彙を知らずに日常英会話もないものでしょう。(答えは microwave oven, watering can, swing, ladle, cutting board, pushup, hide-and-seek)もっとも短期研修では知らず後悔という場面は少ないでしょう。

 さらに、学業上の専門分野やその他関心事項の語彙の調査をお勧めします。例えば好きな洋画の話題には原題が必要です(http://www.imdb.com)。邦題は原題と似ても似つかないことがままあるのです。

★使用単語集が決まらない場合
 どうしても使用単語集が決まらない人には、『JACET8000英単語』(桐原書店)、『英検PASS単熟語』(級別:旺文社)をお勧めします。前者は、大学英語教育学会の総力を挙げて主要な8000語を選定し、それらを千語ごとに8段階の重要度ランクに分け、必要に応じて例文を付したものですが、絶版ののち復刊しているようです。後者は英検の級ごとの単語集で、はっきりとランクの違いが見てとれます。また、九州大学に在学中は、アルク教育社のネットアカデミー2が利用できますので、http://gogaku.kyushu-u.ac.jp にアクセスし、「道場」という携帯でも利用できる語彙学習プログラムをお試しください。

 単語集の選び方ですが、語彙がずらりと並んでいる単語集の場合、平均して1ページに知っている語彙とそうでない語彙が半々くらいとなっているものが取り組むのにちょうどよいと思います。 全く知らない単語ばかりではつらいばかりで、中々先へ進めないことにいらだちを覚えることでしょうし、知っている単語ばかりでは、作業は快適でしょうが、効果は薄いということになります。

★単語集は先を急ぐか戻るか
 ところで、単語集で単語を覚えていくときに、一度見ただけでは覚えられるはずもなく、繰り返し取り組んでいくことになるわけですが、一冊通してから繰り返すのがよいのか、それとも途中からもとに戻る方がよいのかと迷っていらっしゃる方もおられるでしょう。これは単語集にどれだけ時間をかけることができるのかという実際的な条件に左右されるのですが、一般に、狭い範囲を繰り返して固めてから先へ進む方が有利だと思います。世話教員も同じ単語集を100回以上繰り返していてそれでも制覇できません。

【発音は重要】
★「日本人発音でいいんだ」は違います
 よく「我々は英語の母語話者のようにしゃべる必要はない。堂々と日本人発音で行けばいいんだ」といった意見を耳にします。確かに、母語話者かどうか区別がつかないくらいの発音をする必要はありません。しかし堂々とした日本人発音では困ります。上記のような意見を言う人は、海外で自分の発音が通じずに困った思いをしたことがないのだと思います。現にケンブリッジ大学英語・学術研修の英語授業を担当される教員から、九大生は発音が問題だという声をよく聞きます。ある程度正確な発音を、発音記号等によってメカニズムを理解する形で習得することが望ましいです。高校までの英語学習でこうした知識の習得が義務になっていないのは残念なことです。

 発音の重要性にはいくつか理由があります。まず、世界で英語は、英語を母語としない人々が仕事等で使用している数の方が母語話者よりも多いのであり、国際協力の場面等を想像してみても、対話相手がみなそれぞれの母語のなまりを持つ英語を話したら、快適にコミュニケーションがはかれるでしょうか。英語圏で会話を交わしたことのある人なら、単純な単語でも通じない経験をしたことがあることでしょう。ある程度標準的な発音を身につけておくのがマナーでもあるし、実用的なのです。

★メカニズムを理解して第3の言語にも活かそう
 また、発音記号を中心に、メカニズムで理解した発音の知識は、第3の言語を学ぶ際に役に立ちます。国際ビジネスパーソンなら英語だけで一生通せるとは限らないでしょう。日産のゴーン社長も、アラビア語、英語、フランス語、スペイン語などを駆使できることが成功のひとつの要因になっていると考えられます。発音記号というのは本来全言語共通で、英語の辞書では英語向けにカスタマイズされているのが普通ではありますが、英語の辞書にある発音記号をマスターしておくことで、他の言語の辞書の発音記号もかなり理解し発音することができると思います。

★母音:寄生母音と曖昧母音
 具体的に日本人発音で困る点をいくつか見ておきましょう。まずは寄生母音です。例えば子音で終わる単語のsit [sIt] に余計な母音を語尾につけて、「シット」[sIto] と発音していませんか(この他に促音(つまる音)や母音の音価の問題もあります)?これだと音節数も変わってしまうので理解してもらえないと思います。この他、英語の母音は本来日本語の母音と同じではありません。同じ発音でも通じる部分もありますが、hat-hut-hot はすべて「ハット」、fast-first はどちらも「ファースト」では区別できません(文脈でわかることも多いですが)。また曖昧母音(アクセントのない音節で母音が弱化したものなど)も、たいていの音節をていねいに発音する日本語のモードで発音していたらうまくいかないもののひとつです。こういう不具合を母語干渉と言います(この場合は母語である日本語が英語に干渉する)。

★子音:破裂音と摩擦音
 次に、英語の子音は日本語にない音が多いです。特に破裂音は注意が必要で、[ p ], [ b ], [ t ], [ d ], [ k ], [ g ] は口腔内での破裂を伴うのが日本語の対応音と異なる点です。この他、英語の多くの摩擦音も日本語にはありませんし、子音の音価に限ってみても様々な相違点があります。

★音の変化
 さらに英語は単語と単語の接続部分で音の変化が生じるケースが多いです。これは、日本語では文節等ごとに喉元が締まり、リエゾンが起こりにくいのに対し、英語では単語と単語の間に喉元の締まりのような境界部分での区切りがないということに原因があります。例えば、「本案」は hon と an の間に喉元の締まりが入るため、決してリエゾンして「ほなん」とは読みませんが、an orange ではリエゾンして「アノレンジ」となります。それで境界部分での音変化が英語では生じやすいのです。Shut up! が「シャット・アップ」でなく「シャラップ」になるのもそうした音変化のひとつです。

★アクセント
 また、アクセントも日英語で大きく異なります。日本語は高さアクセントを採用していますので、「ふくおか」は「低高低低」のアクセントパターンを持ち、「く」にアクセントがありますが、その「く」は長くなったり強くなったりはあまりしません。しかし Tokyo では to が強く長く発音され、kyo は弱く短くなります。日本語の「とうきょう」ではどこも高くも強くも長くもならずに平板アクセントで発音しますが、これは英語ではありえません。

 リズムも大きく日英語が異なる部分です。日本語は音節1つに拍1つという対応が最も歌いやすく、「う・さ・ぎ・お・い・し・か・の・や・ま」ではひらがな1つ(1音節)が1拍を担っており、どの音節も拍を担います。これに対し英語では、拍の乗る音節とそうでない音節が区別されるのが普通で、シカゴの「素直になれなくて」では、Ev・ery・bod・y needs a lit・tle time a・wayの太字部分が拍に乗ります。従って、日本人が英語の歌を歌う場合、すべての音節に拍を乗せようとして音符が足らなくなり、楽曲についていけなくなるということがおこりがちなのです。
 これだけ違いがあれば、日本人発音でいいんだという開き直りは困りものだということがおわかりいただけるでしょう。リーディングでも音読を実行して下さい。

【リスニング】
リスニングを最初に掲載したのは優先順位が高いからです。理由を少し挙げます。
 1)相手の言うことがわからなければ対話が成立しない。
 2)読む話す書くは自己ペースでできるが聴くは相手ペースで難易度が高い。

★2つの方法
 リスニングの勉強には、文章全体の大まかな把握から細かいところを次第に聞き込んで理解の訓練をするやり方と、1文単位で聞き取り英語の音声に慣れるやり方の、いずれもが必要です。どちらも取り組む必要がある車の両輪のようなものなのですが、もしどちらからか始めるということでないと落ち着かないということであれば、私は後者から始めることをお勧めします。いずれのタイプのやり方も、同じ教材でできます。例えば、どのみち検定試験対策をされる予定の方は、TOEFL対策問題集のリスニングの問題を解いていく練習をされると思いますが、その教材で、一語一語ディクテーション(書き取り)をすることもできるわけです。一度だけでは聞き取れない部分も、粘るうちにはたと聞こえる瞬間を迎えたとすれば、そのとき一歩端的なリスニングの力が向上したと言えるでしょう。一度だけで諦めて答えを見るというのではいけません。粘って耳をそばだてるのが訓練の前提です。いずれにせよ、知らない単語はいくら粘っても聞き取れませんから、語彙を増やすことがリスニングの近道です。

★字幕なしで映画?
 よく映画が字幕なしで聞き取れるようになるのが目標という方がおられますが、母語話者同士のナチュラルスピードによるスラング満載の対話を瞬時に初聴で理解するなどというのは、およそ英語学習者にとって最後に到達する高みです。易しめの作品を、あらかじめストーリーを知った上で取り組むのならば可能だと思います。あらかじめストーリーを知るなどという下駄をはかせるような工夫は邪道だと考える方もおられるでしょうが、決してそんなことはありません。NHKの二カ国語放送のニュースを英語で聞くのも、話題が日本のものなのでわかりやすいはずであり、適切な工夫だと思います。

★スピードを落とす?
 但し、メディア機器の機能を利用して音声を人工的に遅くすることに頼るのはよい方法ではありません。いろいろな工夫によって標準的なスピードの教材に食い下がるのが結局早道です。そうした理論に基づいた3ラウンドシステムというやり方の教材をお勧めしておきましょう。

 九大在籍中は、アルク教育社のウェブ英語学習システムのネットアカデミー2(http://gogaku.kyushu-u.ac.jp)が無料で使えます。「初中級コースプラス」「スタンダードコース」「スーパースタンダードコース」などの中のリスニング問題に取り組んでみてください。音声を遅くする機能がありますが、標準のスピードで粘ったあとで確認のため速度を遅くするというやり方をお勧めします。最初から遅い速度で練習するのはかえって遠回りです。

【スピーキング】
★話せない!
 日本人の英語学習者が自分の英語力を分析して、他はまずまず悪くないとしても英会話だけは何としても苦手であるということをよく言います。本当は読解すらきちんとできていないという現実があるのですが、会話に絞って言うと、話せない理由の第1は語彙力と文法力の不足です。単語とその並べ方が決め手だということはもうわかりますね。

 英会話は相手が必要なことなので練習などはなかなかままならないという人がいます。しかし次善の策として、リスニングとスピーキングに技能を分けて1人で訓練することもできます。相手が言っていることがわからなければ対話は成立しないのですから、リスニング力を鍛えるということは対話に大いに繋がる訓練だということになります。

★単語と文法
 英会話ができないという場合、よくある誤ったイメージは、単語力や文法力はあるはずなのだが会話を司る回路だけが未整備なのだというものです。高校までの英語教育が対話中心であったら会話の回路ができてよかったはずなのだという不満を持つ人もたくさんいます。しかし、語彙読解を重視したはずの高校までの英語教育を経てもなお、本当は国際標準からみて圧倒的に語彙や読解の力が不足しているのが実態です。ですから、単語と文法をやめてしまってその分英会話の回路を作ろうと思っても思ったほどのレベルに到達しません。

 スピーキングの力をつけるために語彙力をアップしようとすれば、やはりまともに前述の「まずは語彙力のアップを」の項にあるような対策が必要ですが、特に日常英会話に資するものということになれば、表現集として、日常生活の動作を紹介したもの(例:袖をまくる、お茶を入れる)や、短くてもまだ知らない表現(例:You did!)が扱われているものが有効です。http://www.flc.kyushu-u.ac.jp/~passage/passage.html =このHP「教育(英語学習)」>「英単語」の「覚えておきたい口語表現」も活用してください。

 スピーキングに資する文法学習といえばどのようなことになるでしょうか。ここでもやはり英語学習一般に必要なまともな文法力をつけていくしかないのですが、強いて言えば、単語が使われる典型パターンを覚えていくことです。単語にはたくさんの異なった使い方を持つものもありますが、それぞれの単語について最もよく使われるパターンを覚え、どういう単語が必要とされても何とかその単語のまわりに何を組み合わせていけばよいかが思い出せるようにしておくことが大切です。たとえば persuade なら「persuade + 説得される人 + that 節(説得される内容)」といったことです。

★シャドウイング
 ですが、回路が未整備というのも本当の話であり、単語と文法の力を養う他にその回路を整備する1つの方法として、英語のリズムの体得があります。英語のリズムの概要については前述のとおりですが、英語の発音やリズムをつかむために、リスニングの教材を再生して自分も0.5秒程度遅れてついていくシャドウイングという訓練は有効です。英語の発音やリズムがある程度身についていないと教材の音声についていけないからです。最初は何度か聞いて文章を承知している教材について行うのが賢いでしょう。慣れてくれば、NHKの二カ国語ニュースのような番組で、初聴のニュースでありながら新聞等で内容を知っているような国内ニュースについて行ってみることもできるでしょう。全く知らない国の初めて聞く話題のニュースについて、海外短波放送のニュースをいきなりシャドウイングするのは、最高難度の技と言えるでしょう。

★1分間スピーチと録音
 スピーキングに絞った練習としては、自分の好きなトピックの説明を1分で行う訓練を理想的には毎日1回して欲しいです。TOEFL-iBTでも1分の録音が求められます。会話ではないのです。例えば「私はなぜ九大のビジネススクールを選んだか」「もののけ姫ってどんな映画?」「自衛隊海外派兵をどう思う」「NHKってどんな存在?」。一気に1分よどみなしに話せるようになれば大したものです。10-20秒は何とかなっても1分は大変なのです。たった1分なのですが、継続できるかどうかはなかなか難しい問題です。これをやり遂げられるかどうかは、端的に英語学習の成功のバロメータになりうると思われます。ただ、話題は好きなものを優先しましょう。この1分スピーチは必ずしましょう

 また、パソコンのOS標準の録音機能と内蔵マイクで簡単に録音して音声ファイルを残せますので、ぜひ練習でトライしたものは音声記録として残しましょう。ファイルの交換をして互いにわらかない箇所や発音やリズムが不適な箇所を指摘しあう交換日記でもしてはどうでしょうか。再生装置で秒数がわかるので、どの部分についての指摘かも比較的伝えられるはずです。

【リーディング】
★2つの方法
 リーディングは難度の高いものをじっくり読み取ることも速度を重視する(TOEFL-iBTではA4で1枚なら5-7分で読むことが求められます)ことも必要です。前者では学術文書の理解、後者では英字新聞をすらすら読むのが最高レベルといえるでしょう。

 これらの読解の成功のためには、もちろん単語と文法の力が基礎になります。一定頻度以上に知らない単語に出会えば読解に困難を伴うことになりますし、構文をつかめなければ訳のわからない文章にしか見えないということになります。

★精読
 専門書の熟読のような場合には、わからない箇所をとばして先を急ぐことは感心しません。わからないところを放っておかずに粘る、そこにこそ深い読解力を開発していく鍵があります。専門書のような文体はよく練られた文体ですから、読み取れない場合、たいてい書いた側に原因があるわけではないのです。その場合必要な単語や文法の詳細については他書に譲ることにします。

★速読
 英字新聞のような場合は事情が違います。一字一句最初から最後まで細大漏らさずという読み方は現実的ではありません。日本語の新聞でも、見出しを頼りに自分の読みたい記事だけを探し、しかも読み始めた記事を最後まで読み通すとは限らないものです。英字新聞でも同じことです。従って、見出しの内容を瞬時に的確に理解することと、読み始めた記事の扱う内容の概要を素早くつかむことが重要になってきます。

 英字新聞の見出しには特殊な語彙と文法が用いられます。日本語では表意文字である漢字を活用して短いスペースに効果的な見出しを掲出できますが、英語では同じ内容でも余計にスペースが要ります。そこでできるだけ見出しを短くしようとして、新聞特有の短い語の多用が生じるのです。例えば動詞 support のかわりに back、marry のかわりに wed、facilitate のかわりに boost といったことになります。また、通常新聞は直近の出来事を報道するものなので、見出しでは出来事を記述するのにわざわざ過去形を使わず、現在形で処理します(Plane Crash Kills 25)。過去形の -ed すら節約するということでもあります。従って過去形が使われているとそれはかなり以前の過去を示すということになります(Engine Failure Caused Plane Crash, say Investigators)。この他、完了形は避け、受動態では be 動詞を省略し(Kennedy Killed in Dallas)、後位修飾よりも前位修飾を好み(○Osaka Man, ×Man from Osaka)、未来のことは to 不定詞で表す(President to Fire Secretary General)など、いくつか独特の文法が用いられます。

 読み始めた記事の内容を素早くつかむという点ですが、高速なとばし読みの結果要点だけつかんでいく読み方をスキミングといいます。幸い、新聞は普通最初の1段落に主要な情報が詰め込まれ、編集上途中から切られてもいいように、後の段落に行くほど重要度が落ちる配列になっていますから、はじめの1段落を読むだけで、先へ読み進めるかどうかを判断できることが多いです。

★生の英文
 話したり書いたりする場合は標準的な英語を使えばいいのですし、対話で相手の話を聞く場合もこちらが非母語話者だとわかれば丁寧に話してくれることが多いのですが、一般読者を相手にした書き物を読む場合、どんなタイプの英文を読むことになるかわかりません。検定教科書のような精選された文章だけではなく、英語圏の各種HP等で生の雑多な英語にも触れることが望ましいです。非母語話者の書く英文にすらふれておくといいように思います。

 九大在籍中は、アルク教育社のウェブ英語学習システムのネットアカデミー2(http://gogaku.kyushu-u.ac.jp)が無料で使えます。「初中級コースプラス」「スタンダードコース」「スーパースタンダードコース」などの中のリーディング問題に取り組んでみてください。ひとつひとつの題材に難易度が明示されているのが便利です。

【ライティング】
★2つの方法
 時間をかけたじっくりとした作文練習にも、高速多量ライティング(TOEFL-iBTでは100語を10分で書くペースが求められます)にも慣れておく必要があります。また、一文単位の和文英訳も、パラグラフライティングも、まとまったエッセイの練習も必要です。

 ライティングも語彙と文法が基本であることに違いはありません。しかしリーディングの場合と異なり、わからない部分を放っておいてよいというわけにいかないところが難物です。自分が自信を持っている部分だけを使って書くことになるので、どうしても平易な英文しか書けません。ことさら凝ったものを書く必要はないのですが、いくつかできる工夫があります。

★言い換え
 英国はケルト、ローマ、アングロ・サクソン、ヴァイキング、ノルマンなどの征服を受け、様々な言語の影響を受けてきたため、似た意味を持つ単語が多数存在する場合が多く、従って同一の単語を過度に繰り返して用いることは稚拙とされます。日本語なら「福岡」が何度繰り返されても不自然ではないでしょうが、英語を書くときは、Fukuoka, it, the city, the megalopolis, the largest city in Kyushu などと時々言い換えてやると自然です。

★パラグラフ
 以下堅めのしっかりとした文章を書く場合について述べます。パラグラフを書くときは、まず最初に全体として言いたいことの核心を書きます(主題文)。日本人の書く文章は核心を後まで取っておく書き方をすることが多いのですが、ビジネス文書のような実用的文書の場合は特に最初に核心を持ってくることが大切です。主題文に続いて、主題文に示された主張の論拠や提示された用件の詳細を示していく本文を書きます。そして最後に主題文の繰り返しか本文の要約を内容とする結語文を置きます。日本語の起承転結のリズムとはずいぶん違いますね。

★エッセイ
 複数のパラグラフを含む書き物を書くときは、最初に導入の段落、次にそれを展開する複数の主段落、最後に結論の段落という構成にします。導入の段落では、書き物全体で言いたいことの核心(論題提示文)を最後に配置し、その前に導入としてのマクラを入れるのが普通です。例えば QBS が優秀な教育課程であるということを論題提示文として書くのであれば、最近は日本でも学びたい社会人が多いとか、九大にはたくさんの教育課程があるとか、関係はしているけれども論題と微妙にずれたものをいわば遊びとして入れます。これはパラグラフひとつだけで構成する書き物との違いです。展開の段落は、論題を支持する内容のものを、少なくとも3段落は設けます。展開の段落のひとつひとつは、主題文、本文、結語文という構成にするのがもっとも正式ですが、いちいちしつこいと思われる場合は、主題文や結語文は省略しても構いません。論題提示文の中で展開の段落の主題にどんなものが登場するか予告してある場合は特にそうです。主題文や結語文のかわりに段落と段落をつなぐ接続的文章を入れてもよいでしょう。結論の段落ではまず結語文を配置し、その後に展開の段落の要約や遊び的コメントを入れます。コメントとしては、例えば QBS が優秀な教育課程であるということを結語文として書くのであれば、あなたも QBS の受験をお考えになってはいかがでしょうかとか、人間はなにごともチャレンジが必要ですね、といったコメントはどうでしょう。

 練習として何かを書くのであれば、好きなことを題材にするのがいいでしょう。スピーキングの項で述べた1分説明を翌朝書式を整えて書き出してみるのもいい方法ですし、上記のかっちりとした書き方はとりあえず無視して、日記を英語でつけ、高速ライティングを試みるのもいいでしょう。

★メール
 最後に電子メールの場合を少し追加しておきましょう。電子メールでは相手がわずかの時間の間にポイントをつかまえようとしますので、なお一層言いたいことを素早く提示することが必要です。長々とイントロを書いたりしません。件名は具体的に短く、最初と最後の挨拶は最低限の分量とし、宛名や送信者の署名等は左寄せで書き(そうしないと相手のウィンドウ幅によっては途中で改行されてしまいます)、相手の文面を引用するときは直接必要な部分だけにするのが望ましいです。過度に丁寧な書き方は逆効果です。

【参加者の声】
・細かいボキャブラリーとヒアリング力のアップの必要性を感じた。簡単な意志疎
 通はできたが、文化的な話し合い、専門的なつっこんだ話になると、意志疎通が
 できなくなってしまうのである。すると当然ながらネイティブたちは自分たち同
 士で話し合いをし出す。すると話し合いの中で、自分の存在がだんだん小さくな
 ってしまうのである。これほど辛いものはない。

・「集団的自衛権とは何か」を英語で説明できますか? 時事問題が授業でよく話
 題になります。

・自分は喘息があったが、風邪薬購入時いろんな質問を受け、自分の命にかかわる
 のに、その方面の英語表現を準備しておかなかったことを後悔した。(世話教員
 注:英国の市販薬は日本のものより弱く、日本の市販薬を飲みつけた日本人には
 ほとんど効きません)

 

 英国に関する学習

 訪問する国のことをあらかじめ知っておくことは大変重要です。英語が使用される国の文化については切り捨てて、その分英語だけに集中するなどという勉強方法は間違っています。それでは中身はなくてもぺらぺらしゃべればいいと言っているようなもので空しいです。英国に関する学習を事前に充分しておかなかったことを後悔する参加者が例年多いです。どのみち事前研修での発表にも必要な勉強です。

11月の学習連絡会で出題し、皆さんの英国に関する調査結果をまとめた冊子(4
 月学習連絡会で配布)をよく勉強してください。

合格者に案内する英国の歴史に関する英文の教科書の学習は課題となります。入
 手したらこつこつ学習してください。 

『ケンブリッジ大学英語・学術研修への招待:名門校で学ぶ、暮らす、国際人に
 なる』(鈴木右文著、九州大学出版会)に掲載の参考文献を参考にして下さい。
 これらを含め、英国関連の書籍が、伊都図書館2階の国際交流コーナー付近に英
 国関連図書としてまとめて配架されていますので御利用下さい。貸し出しもでき
 ますし、他キャンパスの図書室への配送も手配できます。

UK NOW(英国政府公式日本語HP)は有益です。大使館、留学、英国観光庁、
 英国映画、そのほか膨大な情報の宝庫です。

海外安全情報を時々チェック下さい。外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj>
 左帯の「各国・地域情勢」の「欧州」>「英国」>「海外安全情報」で閲覧でき
 ます。日本人を襲う強盗傷害事件などの情報がでたことがあります。

 

 学術科目に関する学習

 現地研修で履修する学術科目が決まったら、その科目の基礎的事項を自分なりに調べておく必要があります。専門用語を英語で何と言うかも学習が必要です。担当教員から事前に指示があった場合はその学習もしておく必要があります。概ね4月頃からのスタートです。